対1軒 押し引き期待値計算機 ユーザー説明書


計算機の前提と制作思想

当計算機が想定する状況

本計算機は、相手一人からの攻撃(主にリーチ)に対し、自分が押し返すことが局収支として得か損かをシミュレーションするものです。
計算をシンプルかつ実用的なものにするため、「他2人の対局者は完全にベタオリしている」と仮定して数値を算出しています。

制作意図と麻雀に対する考え方

この押し引き計算機は、制作者の以下のような麻雀観・設計思想に基づいて開発されました。

  1. 押し引きこそが強さに直結する
    麻雀において、最も1局の点数が大きく動きやすい局面は、圧倒的に「他家からの攻撃に対して押すか引くか」の場面です。この一瞬の判断を正しく行えるかどうかが、麻雀の強さに最も直結すると考えています。
  2. 押し引きは論理的に「計算可能」である
    一見複雑に見える押し引きですが、その瞬間に起こりうる未来(自分がアガる、放銃する、ツモられる、流局するなど)は数パターンしか存在しません。そして、それぞれのケースで移動する点数や確率は、過去の膨大なデータから「平均値」として算出することができます。
    つまり、正しい押し引きとは運や勘ではなく、「押した場合の局収支」と「オリた場合の局収支」の期待値を論理的に比較することに他なりません。
  3. すべての基本は「局収支」の積み重ね
    リーグ戦の順位点や半荘収支(トップ率など)を意識する場面はありますが、麻雀で勝つための基本はどこまでいっても「1局あたりの局収支を最大化すること」です。目先の押し引きの多くは局収支で判定すべきであり、その正しい積み重ねの先にこそ、理想的な最終順位や半荘収支がついてくると考えています。

当計算機を通じて、感覚に頼りがちだった押し引きの境界線を数値として可視化し、より精密な戦術構築に役立てていただければ幸いです。


基本の使い方

  1. 画面上部の、ルール、自分の打点、形、親(子)を入力します。
  2. 条件に合わせて一部の数値が自動入力されます。
  3. 「計算実行」 を押すと、入力した条件で押した場合の局収支が算出されます。

カスタム数値設定

各項目は自由に数値を入力することができ、場面に合わせた詳細な数値設定をすることができます。

テンパイまでにかかる平均巡目

テンパイまでにあと何巡かかるかの予測値を入力します。

1. 場の状況(河や他家の副露)に見えている枚数を考慮しない場合

その手の純粋な有効牌の枚数を「受け入れ枚数」とします。

テンパイ巡 = 120
受け入れ枚数

2. 場の状況(河や他家の副露)に見えている枚数を考慮する場合

壁(ノーチャンス)や山に深そうな牌などを考慮する場合の計算式です。※見えていない枚数 = 残り山枚数+相手の手牌

テンパイ巡 = 見えていない枚数
受け入れ枚数

自分が副露(鳴き)できる手の場合の補正

鳴いてテンパイに進める手の場合は、受け入れ枚数を以下のように補正して計算してください。
* チーできる枚数 × 2
* ポンできる枚数 × 4

【具体例】 355m23344p99s 白ポン
純粋な受け入れは15枚ですが、そのうち4枚はポン、11枚はチーが可能です。
* 補正後の受け入れ: (4 × 4) + (11 × 2) = 38
* テンパイ巡の計算: 120 ÷ 38 = 約 3 巡

※ 副露できる牌がリーチ者の現物であるなど、より早くテンパイできそうな要素があれば、各自でさらに数値を小さくするなどの補正をかけてください。

【注意事項】


自分の打点

ツモアガリ、一発、裏ドラなどを考慮した「自分の期待打点」を入力します。

リーチ時の期待打点表(目安)

役・飜数
立直のみ 2700 4000
立直平和 3700 5500
立直+1飜(40符) 5000 7500
立直七対子 5900 8400
立直平和+1飜 6300 9400
立直+2飜(40符) 7000 10500
立直+3飜 9000 13500
立直+4飜 11000 16500

相手の平均待ち枚数に対する自分の待ち枚数比

テンパイしている相手一人に対して、自分の勝率が相手よりどれだけ高いかを表す数値です。

良形か愚形かわからない平均的な相手の待ち枚数は約5.9枚です。これを利用して自分の待ち枚数との比を出し、数値設定をします。このとき、何枚切れなどは考慮しません。

【算出例】

  1. 自分が 334455m567p1178s の8枚待ちテンパイの時
8 = 1.36
5.9
  1. 自分が 33455m567p11789s の3枚待ちテンパイの時
3 = 0.51
5.9

自分の待ち枚数と「待ち枚数比」の対応表

相手の平均待ち枚数を5.9枚と仮定した際の対応表です。
「簡易設定(仮)」で良形を選択した場合、自動的に8枚待ちの値が入り、愚形を選択した場合、自動的に4枚待ちの値が入ります。

自分の待ち枚数 相手の平均待ち枚数に対する自分の待ち枚数比
1 0.17
2 0.34
3 0.51
4 0.68
5 0.85
6 1.02
7 1.19
8 1.36
9 1.53
10 1.70
11 1.86

供託(相手の立直棒含む)

供託が何点分落ちているかを入力します。
相手の立直下であるとき、相手が出している立直棒も含めて入力してください。


切る牌の放銃打点

押したい牌で放銃した時の放銃平均打点を入力します。

立直の一発目や、ドラ、混一色仕掛けに役牌を押すときなど、通常より放銃時打点が高そうな牌を押すとき、この値を調整します。

立直一発目の放銃時打点(目安)

ルール・特徴
最高位戦ルール 6900 10000
最高位戦ルール・相手ドラ0枚 5500 7800
Mリーグルール 7600 10900

切る牌の放銃率(%)

押したい牌がどれだけの放銃率(%)かを入力します。

各自の感覚で入力していただいて構いませんが、以下に制作者が用いている「簡易的なリーチに対する放銃率の算出方法」を掲載します。

⚠️ データの出典について
以下の算出方法は、書籍『統計学のマージャン戦術』(みーにん著)に掲載されている「数牌/字牌の巡目別危険度」の数値を参考に、当計算機用に制作者が簡易的なロジックとして落とし込んだものです。

【前提条件】

1. 数牌の場合

まずは以下の計算式でベースとなる「良形放銃率」を出します。

良形放銃率(%) = 60
残りスジ本数

このベース値に、牌の種類に応じた 愚形放銃率の補正 を加算してください。
* 37(ペンチャン、カンチャン、シャンポン全てに当たりうる): +3%
* 28+2%
* 19+1%

2. 字牌の場合

中盤までの基本的な放銃率は、以下の (A) = 「巡目 ÷ 2」 をベースに計算します。
* ション牌(生牌)の役牌: (A)
* 1切れの役牌: (A) ÷ 2
* ション牌(生牌)のオタ風: (A) ÷ 2
* 1切れのオタ風: (A) ÷ 4

※ただし、最終盤(流局間際)は以下の (B) = 「巡目(%)」 をベースに変更します。
* ション牌(生牌)の役牌: (B)
* 1切れの役牌: (B) ÷ 2
* ション牌(生牌)のオタ風: (B) ÷ 2
* 1切れのオタ風: (B) ÷ 4

3. その他の状況補正

【計算例】

残りスジ11本の相手の立直に対して、無スジの 2(または 8)を切る場合の放銃率は、以下のようになります。

60 + 2 = 約 7.5%
11

と見積もることができます。


自分のリーチ棒

リーチをする場合、1000 を入力します。

門前イーシャンテンの押し引きを考える時も、テンパイ時にリーチをするつもりであれば 1000を入力してください。
当計算機は、テンパイ後かつ、リーチ宣言牌で放銃しなかった場合のみ、1000点失点する仕様になっています。


基本放銃打点

相手とのめくり合いの中で放銃した際に支払う打点を入力します。つまり、相手のリーチのロン平均打点を入力します。

相手のリーチのロン平均打点(目安)

ルール・特徴
最高位戦ルール 4500 6300
最高位戦ルール・相手ドラ0枚 3500 4700
Mリーグルール 5300 7500

流局時得点

流局した際にもらえる点数を入力します。

当計算機は「1人相手に押し返し、他2人はベタオリする」と仮定しているため、以下の数値を入力します。
* 自分がリーチをした場合: 500
* 自分がリーチをしない場合: 1500

リーチ棒の次局回収について
リーチ棒は次局に約1/4(25%)の確率で返ってくるとされていますが、本計算機は「この局のみの局収支」をベースに考えるため、初期設定ではその値は計算に含めていません。もし回収期待値も計算に含めたい場合は、上記の基準値に +250 して入力してください。


流局率(%)

押し返した結果、誰もアガらずに局が終了する確率を入力します。

大まかな目安として、8巡目に良形で押し返した時の流局率は10%愚形で押し返した時の流局率は20% とすることができます。

より正確な数値を設定したい場合は、以下の「残り巡目」と「自分の待ち枚数」に応じた詳細表を参考に調整してください。

残り巡目と自分の待ち枚数に応じた詳細流局率表

自分の待ち枚数/残り巡 5巡 10巡
3枚 46.58% 21.70%
4枚 42.59% 18.14%
5枚 38.91% 15.14%
6枚 35.51% 12.61%
7枚 32.39% 10.49%
8枚 29.51% 8.71%

ベタオリ期待失点

真っ直ぐ押さずに、現物などを切ってベタオリ(完全に守備に回る)を選択した場合に、その局で最終的に失う平均点数を入力します。

対局者の関係性に応じて、以下の数値を基準に調整してください。
* 子 vs 子 の押し引きの時: 1000 程度
* 自分、または相手が 親 の時: 1700 程度

⚠️ データの出典について
以上の算出基準および流局率等の詳細データは、書籍『統計学のマージャン戦術』(みーにん著)に掲載されている内容を参考にしたものです。